
ニホンでは飲食店やコンビニ・小売店の従業員はサーバント(召使い・使用人・下僕)と思われがちなのですよね。
お医者様など先生と呼ばれる職業の方々には、理不尽だと思うことがあっても頭ごなしに怒鳴る人はあまりいません。
確かに最初は店舗側に落ち度があってクレームが始まります。
店舗側の落ち度に対する正当な指摘や代替の要求が行われてそれで済めば良いのですが、残念ながら感情を表に出してしまうとクレーマーとなります。
クレーマーを今風に言ったのがカスハラです。クレームという行為だけなら正当な要求ともいえますが、感情がのってしまうとクレーマーとなりカスハラと同義語になってしまいます。
ニホン人は店舗に入った瞬間から神様に変身してしまうので、丁重に『お・も・て・な・し』されないと気がすみません。
お客様は神様(というより殿様)に変身してしまっているので、些細なミスも許せません。
タチが悪いことにカスハラする人は自分は正当な要求をしているだけと思っており、カスハラしているという自覚はありません。
諸外国だと時間通りに電車が来ないのは当たり前でも、ニホンだと時間通りに電車が来ないのは許せませんよね。
ニホンは『おもてなしの文化』なので、逆に雑に扱われたときに怒りが止まりません。
実例を上げて、対策を検証していきたいと思います。
✓カスハラとクレームの違い
✓カスハラの実例・実態
✓ニホン人のカスハラ体質について
✓カスハラ・クレーマーの対応法
カスハラとクレームの違い:カスハラとクレームの線引きはどこ

クレームとは何?
店舗に入り、自分が受けるべき正当なサービスを受けられなかった時にクレームを言います。
✓ 料理が来るのが遅い
✓ 自分の注文したものと違う
✓ 従業員の愛想が悪い
✓ 購入したものが不良品・料理が不味い
従業員はその道のプロでなければなりませんが、ニンゲンのやることなのでうまくいかない時もあります。
その不都合を従業員に指摘して、正当な要求を満たしてくれれば満足して帰ればよいのです。
正当な要求が満たされてもネチネチいうのはクレーマーです。神様状態なので深く謝罪されないと承認欲求が満たされません。
クレームを指摘しても正当な要求が満たされない時はその店を立ち去れば良いのです。
でも、使用人たちに雑に扱われたと感じてしまった神様達の溜飲は下がりません。
✓ 本社にチクってやる
✓ ネットで拡散してやる
受けるべきサービスの正当な要求がクレームです。
おさまらない自分の感情をぶつけるとクレーマー=カスハラになります。
カスハラはどんな行為?
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの
構成労働省カスタマーハラスメント対策マニュアル
自分は正当な要求を受けられなかったのだから、相手には何をしてもいいというのがカスハラです。
神様を雑に扱った使用人どもには『然るべき仕打ちを返さなければならない』と上から目線で考えます。
ニホン人は『従業員とお客様』という立場になった瞬間に、同等のニンゲンではなくなってしまうのです。
自分は神様で相手は使用人なので怒りも心頭です。
✓ 暴言を吐く
✓ 過度な要求をする
✓ 相手の時間を拘束する
✓ SNSに投稿する
これらの行為はカスハラ認定されています。
確かに最初の不手際は店舗側にあったのかも知れませんが、その見返りを『倍返し』してやらないと気が済まないのです。

クレームとカスハラのあいまいな境界線
従業員側が『不手際になってしまった理由』を述べると、言い訳をしていることとなり火に油を注ぎます。
したがって、何を言われても黙って聞いているしかありません。
それをいいことに神様達は話しを脱線していきます。
✓ 自分はシゴト先で相当にエライ人物である
✓ 自分も同じサービス業をしているのでいい加減な対応が許せない
✓ 今回のお金は返金して欲しい(全部食べておきながらw)
✓ 家までお金(または商品)を届けてくれ
✓ ネットでこのことを拡散するかもしれないよ(ネット使えそうにない高齢者でもw)
最初は正当な要求をしてくるのですが、だんだんと自分のストレス発散になっていきます。
コチラに落ち度があり何も言い返せないのをいいことに、何を言ってもよくなります。
カスハラするヒトは自分の価値観が絶対だと思っていて、相手を教育してあげるという意識です。
正当なはずのクレームがカスハラに発展してしまうのも、自分は絶対に間違っていないニンゲンで、相手がミスを犯したのだから『屈服させねばならぬw』とココロの奥底で考えているからです。
そんな深層心理なので、正当なクレームがだんだんとカスハラになるのです。
もちろん、本人にカスハラをしている自覚はありません。
カスハラとクレームの違い:具体的事例

女性従業員が許せないキャリアウーマン
ある大きな家電量販店でそこそこ大きなものを購入したキャリアウーマン。女性従業員が小さなカウンターに商品を置いたので自分が荷物を置く場所がなくなり。お財布を出すのが大変だった。
本来商品を車まで運んでくれることまでしてくれても良いであろう。おまけに購入した商品に不具合があった。
ということで、店に戻ってきて店長を呼び出して、レジ前で1時間以上拘束してクレームをつけました。
たしかに、レジ係の女性従業員の気が利かなかったのが落ち度かも知れません。商品に不具合があったのはお店側の落ち度です。
しかし、そこまで復讐したくなる気持ちはわかりません。
本社まで乗り込んでくる高齢者
『おたくの店で食べた野菜がしなびていた。しなびているのを承知で従業員が持ってきた。』
『あの従業員が許せない。おたくの会社はどういう従業員教育を行っているんだ。』
『オレはこの近所に住んでいる』と本社に乗り込んできました。
丁寧に謝りましたが『お前おれの名前を知らないのか?お前どこのものだ?』とすごまれました。職場は私の地元ではないのであなたのことは知りません。
カイシャで偉かったのか、ずっと威張って生きてきた高齢男性に多いクレーマーです。
もちろん自分がカスハラをしているという認識はありません。
『オレが教えてやる』中年男性
ある定食屋で食べたラーメンが不味かった。その中年はラーメン専門店の店主をしているのでその味が許せなかった。『どうしてこんな風にしか作れないのか?プロとしてお客から金をもらうのは失格だ。オレが教えてやる。』と夜な夜な電話してきてご指導される。
そしてときどき食べに来て、またご指導をされる。
自分の価値観に絶対の自信があるのは結構なことですが、他人に押し付けてはいけない。
常連だからサービスしろよ
飲食店にとって週に2~3回くるお客さんは常連さんであるが、お客さんにとっては3ヶ月に1回でも行く店は常連気取りになる。
『自分はこの店をよく使っているのだから、このビールくらいサービスしてよ。』店主が受けてくれたらラッキーなのでみな真顔で言います。
そして要求がだんだんエスカレートしていきます。
カスハラする人は、相手の弱みに付け込んで物事を要求する卑怯者なのです。

カスハラとクレームの違い:カスハラはなくならない

カスハラはニホンの性質
アメリカのマクドナルドで『ハンバーガープリーズ』と言ったら目をひん剥いて『ホオワット?』と言われました。
諸外国では店員もお客も対等なので店員も意にそぐわないと平気でイヤな顔をします。
そこにおもてなしの精神はありません。
高級店でのおもてなしには対価(=チップ)が必要です。
ニホンはおもてなしの文化なので、店舗等で雑に扱われると過剰に腹が立ちます。
自分もそうですよね?
つまりおもてなしの文化がカスハラを生んでいるので、カスハラはニホン人の体質と言えるんですね。
クレームとカスハラのギリギリをつく
カスハラをするヒトは基本的に卑怯者です。
相手に落ち度があったのをきっかけに重箱の隅をつついてきます。
『自分は文句を言いたいのではなく、他のお客様のため引いてはこの店が良くなるために言っている』などと宣います。
自分は正義の味方面です。このようなヒトはヒトの過ちを許して共生していくことのできない狭量で寂しいヒトなのです。
カスハラの対応法

実店舗を構えている営業態の従業員はお客様とケンカしてはいけません。
村社会のニホンにおいてはまず耐え忍ぶことから始めますw。
ひたすら聞いてあげる
クレームはまず相手の話をよく聞いてあげることが基本です。
✓ こちらにどんな不手際があったのか?
✓ それによってお客様がどんな不快な気持ちになったのか?
をよくヒアリングしてあげることが基本です。
話しを真剣に聞いてあげることだけで相手の承認欲求が満たされ、興奮状態は落ち着いてきます。
相手の承認欲求を満たしてあげる
お客様は自分の言いたいことが全部受け入れられたら満足します。
受け入れることと受け入れられないことを線引きしよう。
受け入れるべきこと
受け入れてはいけないこと
この『受け入れてはならないこと』を要求された場合は迷わず警察に連絡しましょう。
仲良くなる
『受け入れてはならない』ような極度に悪質な場合以外は、相手も言いたいことを言ってスッキリしているので心を開いてくる場合があります。
商売人はお客を選んではいけません。終わったことは水に流して受け入られる度量の広さを持ちましょう。
ヒト様に物を売る商売を生業としているものは、100売ったら1~3くらいのクレームや返品があることは覚悟してかかるべきです。
カスハラとクレームの違いについてよくある疑問

カスハラの特徴にはどんなものがありますか?
✓ 店舗のミスは1mmも許せない
✓ 自分は100%正しい
✓ わたしはお客様だから神である
✓ あなたは従業員であるから下僕である
クレームの中でカスハラとみなされるケースはどのようなものですか?
店舗側の不手際によりお客様が不快に感じたことに代替え措置が講じられれば、クレームの処理は終わりのはずです。
しかしながらクレームを言うお客様の大部分は、自分の気持ちをおさめるためにその店舗の従業員の屈服する姿まで求めます。
そー考えると、今まで自分が対応して処理してきたクレームのほとんどは、カスハラと言えますね。
カスハラを具体的にどう撃退できますか?
カスハラを撃退してはいけません。警察に訴えて撃退しなければならないのは先の4つの受け入れてはならないカスハラの場合だけです。
神様達は正当な代替の要求とカスハラのギリギリのラインを付いてきます。
グレーの部分は甘んじて受け入れる度量くらいないと、広い世間で商売はできませんw。
カスハラによって従業員はどのような影響を受ける可能性がありますか?
アルバイトの立場の従業員がカスハラを受けると、またそのお客様に遭うのが怖いので辞めたくなります。
カスハラ対応は然るべき地位と給料をもらっている店舗責任者が受けて立たなければいけません。
どの業種でカスハラが特に多く見られるのでしょうか?
カズカズの資料がありますが、アンケートの取り方や母数でかなり違います。
主観やイメージで大体間違いはないのではないでしょうか。
・ 飲食業(レストラン・居酒屋)
・ 宿泊業(ホテル・旅館)
・ 小売業(スーパー・コンビニ)
・ 旅客運送業(タクシー・バス)
・ 福祉・介護(ヘルパー)
・ 金融業などの(窓口対応)
・ 公務員(窓口対応)
▷ BtoCやめとけと言われるのはなぜ。お客様は神様だから?
カスハラとクレームの違いは何?おもてなしも国の神様達のまとめ

クレームの行き過ぎがカスハラですが、クレームを言っているヒトはクレームをつけている時点で不手際をハタラいた相手を糾弾するという優越的立場にいるので言動のエスカレーションは止まりません。
おもてなしの国にいるので、おもてなし対応をされなかった場合に誰もがクレーマー(カスハラするヒト)におちいる可能性があります。
また、商売というものは不特定多数のニンゲンを相手にしている以上、ある程度のグレーなカスハラまでは受け入れていく覚悟と度量がなくてはやっていられないと思いますw。
✓ カスハラはおもてなしの国の副産物である
✓ 不特定多数に商売をしている以上、ある程度のカスハラは受けて立つ度量が必要
✓ 受け入れてはならないカスハラの線引きをする
✓ 自分自身がカスハラにならないように他人を許せる度量を持つ